がんと向き合い生きていく

「心の悩み」が身体にがん症状を起こす場合がある

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 結局、Aさんの検査結果は、採血、超音波検査ともに、まったく異常ありませんでした。私はお2人に「検査では異常ありませんでした。良かったね」と言葉をかけましたが、Aさんは「本当に悪性リンパ腫はないのでしょうか?」と3回も繰り返し尋ねてきます。その都度、私が「大丈夫です。もし、心配ならまた来て下さい」と話したところ、母親はホッとされていました。

 その後、来院されることはありませんでしたが、半年後に母親から「おかげさまで息子がS大学に合格した」と看護師に電話があったそうです。

■検査で異常なしと分かると症状が消える 

 38歳のK看護師(女性)は外科病棟に勤務していました。長年にわたって便秘症で、時々、緩下剤を飲んでいました。受診の1カ月ほど前から何度か左下腹部痛があり、便通も悪くなって、ほとんど毎日緩下剤を内服していたといいます。自分で左下腹部にしこりを触れるようになり、そこに便がたまっていると考えていたのです。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事