しかし世界の研究者とバイオ企業がもっとも注目しているのは、ゲノム編集です。iPS細胞は実用化まで、まだ長い道のりがあります。ところがゲノム編集は、すでに実用化のレベルに達しているからです。
ゲノム編集を一言で説明すると、狙った遺伝子を、まるでワープロソフトで編集するように追加・修正・削除する技術、ということになります。いくつかの方法があるのですが、とくにCRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン、略してクリスパー)と呼ばれるものが、その安さと手軽さから、圧倒的な人気を集めています。
その方法は、あっけないほど簡単です。ネットからクリスパーの試薬を注文し、顕微鏡下で生物の受精卵などに注入する、たったそれだけです。しかも試薬の値段はたかだか数百ドル(数万円)。実体顕微鏡(2~30倍程度の低倍率で薄切り標本なしで使える)と、ちょっとした器具があればどこでもできますし、高校生でも少し練習すればできてしまいます。
ゲノムが世界を変える