ゲノムが世界を変える

狙った遺伝子を追加・修正・削除…ゲノム編集がやってきた

(C)PIXTA

 しかし世界の研究者とバイオ企業がもっとも注目しているのは、ゲノム編集です。iPS細胞は実用化まで、まだ長い道のりがあります。ところがゲノム編集は、すでに実用化のレベルに達しているからです。

 ゲノム編集を一言で説明すると、狙った遺伝子を、まるでワープロソフトで編集するように追加・修正・削除する技術、ということになります。いくつかの方法があるのですが、とくにCRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン、略してクリスパー)と呼ばれるものが、その安さと手軽さから、圧倒的な人気を集めています。

 その方法は、あっけないほど簡単です。ネットからクリスパーの試薬を注文し、顕微鏡下で生物の受精卵などに注入する、たったそれだけです。しかも試薬の値段はたかだか数百ドル(数万円)。実体顕微鏡(2~30倍程度の低倍率で薄切り標本なしで使える)と、ちょっとした器具があればどこでもできますし、高校生でも少し練習すればできてしまいます。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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