がんと向き合い生きていく

意識はなくても「生きている喜びがある」状態は存在する

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「『生きているのがかわいそうだ』『生きているほうがよいのだろうか』ではなく、『生きていることが快適である』『生きている喜びがある』という状態が可能であり……そのようなことがなされうるように社会的なとりくみをおこなうことが社会の役割であり、人間社会の在りようではないかと思うのである」

 Fさんからの質問に、R看護師は「Mさんの体全体がリラックスされて、『気持ちいい』と言っている。その時、私はMさんから幸せをいただいているのです」とも話されたといいます。

 後日、ある病院の研修会で私がR看護師の話をしたところ、数人の新人看護師から「Rさんのような分かる看護師になりたい!」と声をかけられました。

 われわれがそうした重症心身障害者の看護や命の大切さなどについて話し合っていた頃、相模原市にある障害者施設の元職員が、利用者19人を殺害する事件が起こったのです。次回、あらためてお話しします。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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