他の病気との関係も調べられています。腸内細菌がつくり出す酢酸や酪酸は、大腸の免疫系を調節し、慢性大腸炎を予防する働きを担っています。
さらに、コリンという動脈硬化を予防する物質をつくり出す細菌も見つかっています。
我々の栄養補給にも深く関わっていることが分かってきました。
たとえば、疲労回復に必要なビタミンB2・B6・B12や葉酸をつくり出しているのです。その量は我々が毎日必要とする量の10~20%に達するとか。
そんな腸内細菌に新たに加わった役割のひとつが「短鎖脂肪酸」の生成です。この物質は、腸の表皮細胞を刺激して、GLP―1と呼ばれる物質の分泌を促します。「グルカゴン」と呼ばれる、インスリンの分泌を調節し食欲を抑制する働きを持ったホルモンの仲間です。つまり、腸内に短鎖脂肪酸をつくる細菌がたくさんすみついている人は、少量の食事で満腹感が得られるため太りにくく、逆の人はなかなか食欲が満たされないため、食べ過ぎて太りやすいというわけです。
腸内細菌をうまくコントロールできれば、個別化栄養の実現に一歩近づくことができそうです。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。