ガイドライン変遷と「がん治療」

乳がん<8>術後薬物療法 期間は「5年」から「10年」推奨に

(C)Chinnapong/iStock

 乳がん患者の大半は、数カ月間の術前薬物療法を経て、ようやく手術にこぎつけます。しかし部分切除を受けた患者と、全切除で腋窩リンパ節郭清も必要だった患者には、さらに3~5週間にわたる放射線治療が待っています。それだけでは済みません。放射線の有無に関わらず、全員に「術後薬物療法」が行われるのです。

 再発リスクが高いと判定された患者には、抗がん剤が使われます(期間は3カ月から6カ月)。腫瘍サイズやリンパ節転移の程度、Ki69(乳癌の増殖速度に関する指標)、年齢などによって、リスクが評価されます。またHAR2陽性患者には、ハーセプチンなど分子標的薬も併用されます。

 抗がん剤の有無に関わらず、ホルモン受容体陽性の患者全員に対して、ホルモン療法が強く推奨されています。使われる薬は術前のときと同じ、閉経前ならタモキシフェン、閉経後ならアロマターゼ阻害薬が第一選択となります。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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