がんと向き合い生きていく

「治療には納得、でも通院が苦痛…」大腸がん患者の胸の内

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 そして先週、Wさんが私のところに相談に来られました。Wさんは「時間を取っていただきありがとうございます。T先生からの紹介で受診させていただきました」と言って話し始めました。

 3年前、健診で便潜血反応が陽性となり、S大学病院消化器外科を受診して大腸がんが見つかったこと。Y准教授が手術を担当してくれたが、実際の執刀医は研修医であったこと。ステージは3期で、周りのリンパ節に転移があったこと。病理検査でras遺伝子は野生型ではなかったこと。手術後に再発予防の抗がん剤治療を行ったこと。CT検査で再発が分かり、抗がん剤治療を再開したこと。さらに肝転移が分かって、薬を変えたこと……。

 そしてこんな胸の内を明かされました。

「治療内容については、ガイドラインを見ても標準治療で納得しています。でも、通院するのがとても苦痛になりました。たくさんの患者が次から次へとやってきて、診察時間は2、3分です。ベルトコンベヤーに乗せられている気持ちです。みんなガマンしているのだから、自分の体のことなのだから、私もわがままを言ってはいけない……それは分かっています。でも病院に行く2、3日前になると憂鬱になって、それがここのところひどいのです」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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