がんと向き合い生きていく

熱い情熱を持った指折りの放射線治療医が亡くなってしまった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■治療の最先端で多岐にわたって活躍

 唐沢医師が赴任してきた25年前から、がん治療の診療だけでなく、併設されていた研究所でネズミやミニ豚を使って一緒にがんの研究をしました。「がんに対してより効果を上げ、副作用を少なくする」――この考えは、放射線治療でも私が専門とする抗がん剤治療でも同じでした。

 ある時、私は冗談のように「あなたが母校である東大の教授に選ばれたら考えてもいいけれど、それ以外はみんな断ってね」と唐沢医師に言いました。すると彼はにっこりして、「分かりました!」と答えてくれました。とても深く印象に残っています。

 唐沢医師の活躍は、放射線治療の最先端で多岐に及びました。膵臓がんや脊椎腫瘍に対して、手術の最中に直接照射する「術中照射治療」を行い、IMRT(強度変調放射線治療)を主とする高精度放射線治療装置「トモセラピー」では毎回、治療直前のCT画像を元に小さくなったがんの形に沿って照射範囲も小さくして、周りの副作用を減らす方法を実施。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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