最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

上限を超えればそれ以上治療費がかからない「在がん制度」

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ですが医師が丁寧に説明し、医師や訪問看護が何回入っても、その上限以上は治療費がかからない「在がん制度」があることを説明し、納得の上でようやく在宅医療スタートとなりました。

 入院中は自分の好き嫌いをはっきりと口にする性格から、病棟では看護師さんとよくもめていたそうですが、やはり自宅での居心地がよかったのか、私たちスタッフには常に穏やかに接してくれ、時に笑顔も見られていました。そして退院から1カ月あまり、患者さんはお子さんやお孫さんに見守られながら眠るように亡くなられました。

 自宅で過ごした時間は1カ月だったかもしれません。ですが娘や息子とも会えて話すことができ、思い残すことなく旅立っていけた。在宅医療に切り替えて良かったと奥さまも言っていました。

 さて、この時の医療費ですが、当初お話ししていた「在がん」より、実際に我々スタッフが介入した回数で計算するほうが安かったため、結局「在がん」は使うことはありませんでした。

 このように患者さんの負担がより少ない料金制度を常に選ぶ。そんな柔軟な対応ができるのもまた在宅医療なのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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