最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

患者さんの生活を丸ごと面倒見たい…スタッフに求められる気持ち

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 病院や企業での縦割りの仕事の仕方に慣れている人は、そういった我々の働き方に戸惑う方も少なくありません。

 こんな患者さんがいました。生活保護を受ける独居の76歳の男性で、歩行障害により外来で治療を受けていたのですが、脱水症で左片麻痺。痛風発作も繰り返し、やがては外来通院困難となり在宅医療をスタートさせたのでした。

 そんなある日、本人から熱中症かもしれないとの連絡がありました。部屋にはクーラーがなく、設置を勧めても、自身で費用を捻出するのは困難とのこと。そこでケースワーカーとも相談し、福祉の貸付金制度を利用。足りない金額は当院で分割払いの対応をすることにして、設置は当院のスタッフが行いました。

 診療所がそこまでする必要があるのかと思うかもしれません。でも熱中症で倒れて、救急車を呼んで点滴をすれば、それで病床が埋まり、結果として限られた医療資源を使うことになります。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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