がんと向き合い生きていく

強いストレスが急激にがんを進行させたのではないか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 がんの1次予防に関わる要因としては、食生活、身体活動、喫煙・受動喫煙、生活習慣、がんにつながる感染症などが挙げられ、これらの予防対策でがんの約30%は減らせると考えられています。また、がんの2次予防には、早期発見、検診が重要とされています。

 ストレスで免疫能が下がるといわれますが、ストレスのない生活、あるいはストレスに強くなる方法といっても、性格や心の問題は個人個人で違います。むしろ、適度なストレスは、かえって心のしなやかさや回復力を刺激して、健康状態を維持してくれるのではないかとも思います。「適度」というのが難しいのですが、アルコールにしても、人付き合いにしても、適度な刺激がむしろストレス解消に導いてくれるようにも思われるのです。

「Y医師ががんで亡くなったことと震災の発生は、偶然同じ時期だった」と言われると、そうなのかもしれません。しかし、まったく証拠はないのですが、あの突然の震災による強いストレスが、Y医師のがんの進行を抑える免疫能を低下させたのではないか。私はそのようにも思ってしまうのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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