がんと向き合い生きていく

転移がんが見つかってもどこからきたか分からない原発不明がん

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 結局、Kさんのがんは原発巣は分かりませんでしたが、卵巣がんに準じた化学療法を行ったところ、腹水はなくなりました。腫瘍マーカーも正常化し、3年経過しても再発はありません。

 リンパ節、肝臓、骨、肺、腹膜など、転移した箇所の検査でがんと診断され、全身を調べても原発巣が同定できない場合を「原発不明がん」といいます。病理組織検査では、免疫組織化学染色などでも検討され、腺がん、未分化がん、扁平上皮がんなどと診断されます。その結果を基にして臨床的にさらに精査されます。

 また、腹水細胞診でがん細胞が見つかり、原発が分からない場合、がん性腹膜炎として化学療法を行い、著効した場合はその後に開腹して、卵巣など他にがんがないかを確認するセカンド・ルック手術を行うこともあります。

 原発不明がんは、すでに転移した先でがんが見つかることから、がんの病期としては進行しているわけです。ただ、個々の患者によってその病状や治療法は異なります。ですから、その後の経過も大きく違ってきます。

 成人固形がんの1~5%を占めるとされますが、日本では原発不明がんに関する全国規模の統計はなく、正確な罹患率は不明です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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