がんと向き合い生きていく

ホコリがつく千羽鶴は白血病患者の病室には持ち込めないと言われ…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Aさんは頑張って白血病は寛解し、40日後に一時退院となりました。数日後には「地固め治療」のために再入院です。帰った自宅で、ようやく千羽鶴と合うことができました。

 S子さんのおばあちゃんは、それを伝え聞いてようやく肩から力が抜けた気がしました。やっと「みんなの願いがかなった。S子に折り鶴の折り方を教えてよかった」と思えたのでした。

 この出来事をきっかけに、S子さんとおばあちゃんは、時々、一緒に折り紙を折るようになりました。折り紙の本を見て、小さい鶴、猫、犬、キリンなど、いろいろな動物を折れるようになりました。

 S子さんたちのコーラス部は、地区の合唱コンクールでは3位に入賞したのですが、県大会には出場できませんでした。

 ある時、S子さんはラジオで「折り鶴」という曲の合唱を耳にしました。すぐにインターネットで探してこの曲を録音し、おばあちゃんに聞かせました。今では、S子さんとおばあちゃんの2人で口ずさむ歌になっています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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