医療以上に重要なのは「介護の質」の問題だ。
「重症度の高いおひとりさまが在宅で最期の時間まで過ごせるために『介護』が重要です。コロナ禍においても、中等度以上のコロナ患者に対して医師は最初にコロナを確認するために診察をして、薬を出し、場合によっては酸素の管理をします。しかし、最も重要な役割を果たしたのは、連日、そして1日数回現場に長時間介入し、食事や排便管理、部屋の清掃なども行う介護職の方々なのです」
それでも、「苦しむのを見ているのがつらいから」「夜間に何かあったときに自分たちでは何もしてあげられない」からと、在宅から病院への移動を希望する家族もいる。
「しかし、これらは病院に行ったから解決する問題ではありません。病院でも疼痛コントロールがうまくできない医師は多いし、看護師や介護士が夜通し病棟に付きっきりなわけではない。重症度が高い患者がいつでも苦しいときにナースコールをできるわけではないのは、病院でも自宅でも同じです。在宅診療で介護職の役割が重要なのは、医師以上に患者さんと密な人間関係を築き上げていて、こまめに病状の変化を医師に連絡をいただける点にあります」