Dr.中川 がんサバイバーの知恵

桑野信義さんが投稿 大腸がん手術後の排便障害はオムツでもつらい

桑野信義さん(C)日刊ゲンダイ

 桑野さんは昨年2月にがんの摘出手術を受けてから3カ月ほど人工肛門を装着。なぜわざわざ人工肛門にするかというと、切除部位の縫合不全を避けるのが一つ。その部位より上流に人工肛門を設置することで、腸の内容物が送られず、縫合部の安静を保つことができます。もし縫合不全が起きても、その後の腹膜炎が軽く済むのです。

 ですから、排便障害は人工肛門が外れてから発症します。外れると、皆さん自前の肛門で排便できることに喜びますが、排便障害が発症すると、「人工肛門の方が楽だった」と嘆く人もいるのが現実。大人にとって便を漏らすのはつらく、外出をためらわざるを得なくなるためです。

 症状には程度の差がありますが、がんが肛門から5センチ以内に起こりやすく、肛門に近いほどリスクが大きくなります。その近くには、排尿や性機能にかかわる神経も通っていて、手術でそれらの神経も障害されると、排尿障害や性機能障害が生じることもあります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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