桑野さんは昨年2月にがんの摘出手術を受けてから3カ月ほど人工肛門を装着。なぜわざわざ人工肛門にするかというと、切除部位の縫合不全を避けるのが一つ。その部位より上流に人工肛門を設置することで、腸の内容物が送られず、縫合部の安静を保つことができます。もし縫合不全が起きても、その後の腹膜炎が軽く済むのです。
ですから、排便障害は人工肛門が外れてから発症します。外れると、皆さん自前の肛門で排便できることに喜びますが、排便障害が発症すると、「人工肛門の方が楽だった」と嘆く人もいるのが現実。大人にとって便を漏らすのはつらく、外出をためらわざるを得なくなるためです。
症状には程度の差がありますが、がんが肛門から5センチ以内に起こりやすく、肛門に近いほどリスクが大きくなります。その近くには、排尿や性機能にかかわる神経も通っていて、手術でそれらの神経も障害されると、排尿障害や性機能障害が生じることもあります。
Dr.中川 がんサバイバーの知恵