認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

睡眠不足はアルツハイマー病の原因物質を脳に蓄積させる

認知症予防には質の良い睡眠を

 年を取ると、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌量が減少し、眠りが浅くなります。つまり、年齢を重ねるごとに、質の高い睡眠をきちんと確保できるよう心掛ける必要があるのです。

■質の悪さも問題

 こう話すと、「何時間眠ればいいのでしょうか?」との質問が出がち。最初の方で触れたように、最適な睡眠時間は人によって違います。

 朝、目覚まし時計に頼らなくても爽快な気分で目が覚め、日中は眠気に襲われることなく高いパフォーマンスを維持したまま作業ができ、夜になると自然と眠くなる……。こうなっていれば、自分に適した睡眠時間を確保できているのでしょう。

 ちなみに、昼過ぎに眠くなるのは体内リズムに沿った自然な現象の可能性もあります。そんな時は、15~30分ほどデスクにうつぶせになって目を閉じる「昼寝」は認知症予防として推奨されています。「そんな短い時間では眠気を解消できない」というようなら、それは夜間の睡眠不足が考えられます。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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