認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

「疲れたから」と部屋にこもりがちの老親に笑顔が戻った

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前頭葉は意欲に関係していますから、前頭葉の萎縮によって、いろんなことが面倒になり、やる気が起こらなくなってくる。意欲がなければ、感情は動きませんし、知能を使う活動にも至りません。

 同じテレビを見るにしても、ドラマの内容にツッコんだり、クイズに参加して答えたり、どんな展開になるかとワクワクしながら見守ったりと、意欲的に見ているのと、ボーッと何も考えずに見ているだけでは違ってきます。

■意欲を刺激する声掛けを

 こんなケースもあります。A子さんの80代の母親の物忘れが多くなってきた。同じものを買ってきたり、探し物が多くなったり。A子さんが認知症を疑い、病院に連れて行くと、初期の認知症という診断でした。

 A子さんは母親の家の近所に住んでいるものの、仕事が忙しく、休日くらいしか母親の元を訪れることができない。もともと社交的ではない母親は、一人暮らしの自宅でボーッと過ごすことが多く、休日にA子さんが訪ねても「疲れたから」と寝てばかりいる。

2 / 4 ページ

新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

関連記事