「どうせ、人間、いずれはみんな死ぬ。仕方ない。病気が良くなるように、みんなで努力してくれているんだから、悪くなるのを考えるのはよそう」
そうは思っても、ぽつんと、暗い天井を見つめていると、悪い結果の不安が頭をよぎります。
夜になると、わずかに電車の走る音だけが聞こえていました。カーテンを開けて窓の外を見ると、ビルの明かり、そして時折、電車が走っていくのが見えます。電車の中は明るく、混雑しているのが分かりました。みんな仕事を終えて家路につくのだ、と思いました。
◇ ◇ ◇
Fさんは、再びスマホの動画を見ながら、孫のN君と同じ口調で小さな声で口ずさみます。
「せ~んろはちゅじゅく~よ ど~こまでも~ の~をこえ やまこ~え…… た~のしいたびの~ゆめ~ ちゅ~ないでる~」
そして、退院した後はN君と手をつないで一緒に歌うんだと心に決めたそうです。
がんと向き合い生きていく