第一人者が教える 認知症のすべて

中年期の肥満はアルツハイマー型認知症のリスクを3倍上げる

(C)日刊ゲンダイ

 脳腸相関(脳と腸がお互いに密接に影響を及ぼし合っていること)が近年注目されていますが、肥満症で腸内細菌叢の異常や消化管粘膜のバリアー機能不全があると、炎症性サイトカインや毒素といった炎症を引き起こす物質が血液内に混入。全身臓器に炎症を引き起こすばかりか、それらが脳内にも侵入し、海馬、視床下部、大脳皮質に炎症が起こり、認知機能低下を招くともいわれています。

 現在、肥満症の人は、認知症対策のためにも体重減は必須。食事療法や運動療法だけで痩せられない場合の最後の手段としては、薬を使うという手もあります。今年1月には、肥満治療薬が承認され、約30年ぶりの新薬として発売になります。

 肥満症の診断基準はすでに述べた通りですが、この新薬が保険適用となるのはまた条件が異なり、「BMI27以上で、11種の健康障害に2つ以上該当」または「BMI35以上」であり、さらに高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のどれかに該当し、食事療法・運動療法で十分な効果を得られない場合、になります。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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