第一人者が教える 認知症のすべて

中年期の肥満はアルツハイマー型認知症のリスクを3倍上げる

(C)日刊ゲンダイ

 さて、認知症と肥満の関係は、というと、中年期の肥満が認知症のリスクを上げることは明らかです。

 肥満症の診断基準となる「11種の健康障害」(前出)に含まれる糖尿病、脂質異常症、高血圧は認知症の危険因子。肥満症は動脈硬化を進行させ、血管性認知症のリスクが5倍に上昇し、アルツハイマー型認知症のリスクも3倍に上昇することが報告されています。

 同じく「11種の健康障害」の中の睡眠時無呼吸症候群は、それによる低酸素刺激で、脳の海馬に萎縮を起こしやすくさせます。海馬は記憶に関係している部位です。また、脳内のアミロイドβタンパクが増えることも知られています。

 脳におけるインスリン作用不全は認知機能の低下とも深く関係しています。インスリンの経鼻吸入で肥満症や2型糖尿病に伴う認知機能低下が改善したという臨床研究結果も報告されています。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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