第一人者が教える 認知症のすべて

「いつか」「どこに」「だれか」がわかりづらくなってくる

手で作ったハトの真似ができない(C)日刊ゲンダイ
「できなくなる」が出てきても進行はゆっくり。人生をエンジョイしよう

 ハリウッドスターのブルース・ウィリスさんが2022年3月に失語症を理由に俳優業からの引退を表明しました。今年2月には、前頭側頭型認知症と診断されたことを家族が発表しています。一連の報道で「失語症」という言葉を初めて知った人もいるかもしれません。

 失語は脳の言語中枢が損傷を受けることで、「言葉を発す」「言葉を聞いて理解する」「ものの名前を正しく呼称する」「文字や文章を正しく読み書きする」ことへの障害が生じます。認知症だけが原因ではなく、最も多い原因は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害。事故で脳を損傷して起こるケースもあります。

 視空間認知障害は、認知症の中等度障害の段階で重要な症状です。アルツハイマーで早期から視空間認知障害が出ると、認知機能の低下が早まるとも報告されています。

 視空間認知障害が生じると、視力は障害されていないにもかかわらず、顔や物を認識できない、物を見つけ出せない、外界の様子や立体構造が理解しにくいなどの症状が見られます。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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