第一人者が教える 認知症のすべて

「いつか」「どこに」「だれか」がわかりづらくなってくる

手で作ったハトの真似ができない(C)日刊ゲンダイ

 具体的には、これまで難なく描けた図形を描けなくなる。手指の形を真似できなくなる。運転で道に迷う。よく知っている場所で道に迷う。服を着ようとしても、服の認知はできているが、腕を袖に通せない。左右・上下を逆に着てしまう。

 認知症のスクリーニング検査のひとつに、検査者が手でハトやキツネの形をし、それを真似してもらう方法があります。認知症でなければ簡単に真似できますが、視空間認知障害があると、これができなくなります。

 遂行機能障害は、簡単に言うと、物事を段取りよく進められなくなること。「料理好きだった母親が認知症で料理をしなくなった」という話をよく聞きますが、「料理をしなくなった」というより、遂行機能障害によって、「料理ができなくなった」可能性もあります。

 ただし、いずれも「もともとはできた人ができなくなった」場合。ほとんど料理をしてこなかった人が、料理をしなくなったからといって、それは遂行機能障害ではありません。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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