がんと向き合い生きていく

がんで亡くなった先輩の思い出…内視鏡検査が抜群に上手だった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 仕事ばかりではなく生活の面でも、S先輩のように活躍する、生きることは無理だと感じました。S先輩にストレスなんて皆無ではないかと思ったこともあります。あるいは、ストレスを逆にエネルギーにできる、逆転できる才能がある方なのだとも思いました。

 最後は双方とも転勤となり、お会いする機会はありませんでした。

 私は、何かあれば「S先輩に相談すればよい」と思っていました。しばらくしてから、がんを患っておられたのを耳にしましたが、結局、3年後に亡くなられました。以後五十数年、S先輩のような医師には会えていません。今でも、「こんな時はS先輩だったらどうされただろうか」などと考えます。

「リラの花さくキャバレーで会って、おとこやぶ医者、どこへ行く~」

 S先輩の十八番の歌です。

4 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事