がんと向き合い生きていく

がんで亡くなった先輩の思い出…内視鏡検査が抜群に上手だった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 S先輩はマージャンやゴルフも得意分野だったのですが、この分野については何も教わってはいません。私には勧めませんでした。私のことを勝負事は向かない人間と、そう判断されていたのかもしれません。

 S先輩はご自身のお父さまが亡くなられた時以外は仕事を休むことはありませんでした。

 びっくりしたのは、ある日曜日です。お昼近くになって、いきなり「おい、ちょっと付き合え」と言われました。夜はよくお付き合いさせていただきましたが、日曜の昼に誘われることはほとんどありませんでした。先輩2人と私とで、病院の近くにあった、ある医院に行きました。そこには奥さんとお嬢さんがいらっしゃって、一緒にお茶を飲んで、帰りました。後で聞くと、お嬢さんと私を会わせることが目的だったのでした。

 この話は、私が嫌われたのか、また私にもその気がなかったためか、その後、何も進展しませんでした。何かと不器用な私を見るに見かねて、お世話くださったようにも思います。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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