医療だけでは幸せになれない

論文と現実のギャップ…「サブグループ分析」で目の前の個人に近い人で解析

バングラデシュのダッカ(C)Meinzahn/iStock

 1つは、前もって予定された分析であるかどうかである。研究開始後に予定していない分析として多数のサブグループ分析を行うと、偶然差が出てしまう危険が高くなる。この研究では年齢による分析は前もって計画されたものであり、その危険は小さいかもしれないが、無視していいかどうかはわからない。

 年齢による解析は4つのグループで検討されており、それぞれを有意水準5%で統計学的な差があると判断すると、少なくとも1つは統計学的に差が出るという確率は1-(0.95)⁴=0.19(注)と、19%の確率で有意差を検出してしまう。高齢者で差が出ているのはそうした結果かもしれない。

 ただし、サブグループ分析では一部の対象を取り出すため、検討に組み入れる対象者が少なくなる点に注意が必要だ。対象者が少なくなると、より極端な結果が出やすく、より効果があるとかまったく効果がないとか、極端な結果が出る危険が高くなる。さらには対象数が減ることにより、本来、差があるにもかかわらず、その差を統計学的に有意と言えなくなる危険も大きくなる。つまりサブグループ分析は、差が出やすい面もあり、出にくい面もあるというやっかいな性質がある。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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