第一人者が教える 認知症のすべて

若年性も老年性も「私は絶対にならない」とは言い切れない

若年性では広い範囲でダメージが…

 若年性アルツハイマー病の平均年齢は51歳。ほとんどが50代で発症し、40代での発症例は多くありません。20~30代というかなり若い年齢で発症するケースもありますが、遺伝を原因とする家族性アルツハイマー病で、全患者さんの1%以下と、ごくまれです。

 認知症の症状は、脳の神経細胞の変性が原因で起こる「中核症状」と、中核症状によって状況に適応できなくなり、行動面や心理面で症状が出る「行動心理症状(BPSD)」に大別できます。

 中核症状は、物忘れ、場所や時間などが認識できない見当識障害、失語、失行、失認など。認知機能が低下すれば誰にでも現れる症状です。

 それに対し行動心理症状は、不安、抑うつ、興奮、妄想、幻覚、徘徊、暴言・暴力など。

 若年性アルツハイマー病も、老年性も、中核症状や行動心理症状があるのは共通していますが、若年性は症状の進行スピードが速い(とはいっても、認知機能低下は年単位で進むので、急激に悪くなるということではありません)。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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