第一人者が教える 認知症のすべて

「肥満+握力低下」で認知症のリスクが高くなる

肥満に握力低下を併発していると…(C)日刊ゲンダイ

 そして、MoCAやMMSEの認知機能検査の点数、軽度認知機能障害や認知症の有病率をそれぞれ比較しました。

 すると、正常→肥満→サルコペニア→サルコペニア肥満の順番で、認知機能検査の点数が低下し、軽度認知障害、認知症の有病率が増加するとの結果。つまり、肥満と握力低下(サルコペニア)を併発する人では、認知症のリスクが高い可能性が明らかになったのです。

 年齢、教育歴、基礎疾患を調整した結果では、サルコペニア肥満は正常より軽度認知機能障害のリスクが約2倍、認知症のリスクが約6倍と示されました。

【※サルコペニア 「サルコ(ギリシャ語で〈筋肉〉)」と「ペニア(喪失)」を合わせた造語で、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態のこと。転倒、骨折、寝たきりなどの原因になるといわれている。2016年10月、国際疾病分類に登録され、現在は疾患に位置付けられている】

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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