正解のリハビリ、最善の介護

力量あるリハビリ医は高齢者の「骨折」にどんな対応をするのか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 散歩中に転倒して大腿骨頚部を骨折した103歳の男性患者さんが来院されたときもそうでした。認知機能は正常で、骨折前は杖を使わずに屋外もひとりで歩いておられました。これなら、骨折前の状態まで戻る可能性が高いと考えました。もともとの健康状態が良好で、麻酔科医に全身麻酔も問題なく行えると判断されたので、まずは急性期病院の整形外科で骨折の手術を迅速に受けてもらい、その後に速やかに回復期リハビリを行った結果、元気に歩いて自宅退院されました。

■もともと元気だったのだから回復できると考える

 この患者さんのように、認知機能に問題はなく転倒して骨折する高齢者は、もともと元気で活動的な方が多くいらっしゃいます。しかし、加齢とともに体力が徐々に弱っていく段階で、転倒して骨折が起こるのです。「動ける」ということは、ベースの体力や身体機能は良好といえます。ですから、骨折して手術を受け、回復期で適切なリハビリを行うと、骨折前の弱っていた段階でなく、その前の元気に活動していた頃の状態まで回復するケースが起こるのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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