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将来の発病予想や寿命まで判明? 医療用家系図の有用性

遺伝子検査よりも正確(C)日刊ゲンダイ

 北大西洋に浮かぶ島国アイスランドは、人口約32万人。その大半が9世紀に海を渡ってきたバイキングの末裔です。10世紀ごろから教会による住民台帳と家系図の作成が始まり、1000年分の全国民の誕生と死、病気や死因の記録が蓄積されています。しかも、20世紀に至るまで外部からの人口流入がほとんどなかったため、遺伝と病気の関係を調べるのに最適な国といわれてきました。

 ところが実際に調べてみると、単独の遺伝子が引き起こす病気は意外と少ないことが分かってきました。例えば、すべてのがんのうち、明らかに遺伝子の異常によるといえるのは、わずか5%ほどにすぎません。これはアイスランドに限らず、ほとんどすべての国・民族でいえることです。

■3つの要素でかかりやすい病気がわかる

 その一方で、病気の情報を集めた「医療用家系図」が、将来の健康状態や発病の予想に大いに役立つことが分かってきました。3世代にわたる家系図が一般的です。本人を中心に兄弟姉妹、両親、おじ・おば、そして祖父母の3世代です。ファミリーの誰が、何歳のときにどんな病気にかかったか、何歳で亡くなったか、死因は何だったかを書き込んでいきます。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。