がんと向き合い生きていく

「安楽死」を希望する患者が診察して30分後には笑顔を…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 この日のMさんは、治療法が見つかって生きる希望が湧いてきたのだと感じました。

 たしかに、再発した膵臓がんは完全には治らない可能性が高いといえます。でも、Mさんは、いま元気なのです。もちろん、何も治療しないで過ごす選択肢もあります。患者には自己決定権があり、患者自身が「治療しない」と言ったから……本当にそれでいいのでしょうか?

 はたして担当医は患者と一緒に悩んだのだろうか。患者がどんな治療を選択するのかは、医師からの治療法の情報がとても大切なのです。今回のMさんを見て、他の医師の意見を聞いてみること(セカンドオピニオン)も大切であると思わされました。

 私のこうした意見をもし緩和医療科の医師が聞いたら、「また治療なのか? 往生際が悪い」と言われるかもしれません。しかし、多くの患者は他に治療法があるというなら、治療を受け、生きたいと思います。それは当然のことなのです。

 Mさんがどのくらい生きられるかは誰にも分かりません。それでも、抗がん剤治療が効いて少しでも元気に長く生きて欲しい。そう思っています。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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