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本物の香りと辛味で塩分を補い食欲を増進

麩市の「地からし」は種子を丸ごと石臼で粗挽きする昔ながらの製法(C)日刊ゲンダイ
酵素反応による辛味に抗がん、抗菌作用

 香辛料と人間の食文化には長い歴史がある。料理にちょっとしたスパイスを利かせることは、味を引き立てるアクセントになり、食欲を高進させる材料でもある。また、肉や魚の臭みを消す働きもある。香辛料は種類によって、その化学構造も違えば、作用機構も異なる。

 今回のからしは、いわゆる和からし。アブラナ科の植物であるカラシナ(もしくはその近縁種)の種子をすりつぶした黄色い粉末。実はわさびもアブラナ科の植物なので、からしとわさびは親戚。どちらもイソチオシアネートという揮発性の物質が辛味の正体である(差はその他の香気成分による)。

 アブラナ科の植物の芽の部分を食べると清涼感があるのは、みなこの成分のせい。植物がこんな成分を保有しているのは、むやみに虫などに食べられてしまわないよう防御(忌避物質)するため、と考えられる。植物はこの辛味成分の原料を油の形で貯蔵していて、それ自体は辛くない。植物が傷つくと酵素反応によって油から辛味成分が切り離される。揮発するので空中に広がり、敵を撃退する。なので人間がからしを利用するときも粉をよく練って酵素反応を起こさないと辛くならない。からしの辛味が鼻にツンと抜けるのは揮発性のため。あまりに辛いときは鼻をつまんで空気が口から鼻に抜けるのを防いだほうがいい。イソチオシアネートは、抗がん作用、抗菌作用、動脈硬化予防作用などが動物実験で示されているので、健康増進食材ともいえる。

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