がんと向き合い生きていく

患者と医者は運命共同体 医師の言葉で気持ちが明るくなった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 朝食を取っていなかったKさんは、採血検査を終えると待合フロアの椅子に座り、マスクを顎まで下げて、売店で買ったサンドイッチを食べながら診察を待ちました。1時間ほどたって呼び出しがあり、Kさんは診察室に入りました。

 椅子から立ち上がった担当のB医師から、「おめでとうございます。お変わりありませんか?」と声をかけられ、Kさんは「おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」と返事をして、血圧手帳を差し出しながら「変わりありません。血圧も安定しています」と報告します。

 そして、こんなやりとりがありました。

 ◇ ◇ ◇ 

B医師「今日の採血で、PSA(前立腺特異抗原)は0・03(ng/ml)でした。手術後、ずっと低い値で順調だと思います」

Kさん「ありがとうございます。尿漏れも少なくなり、特に不自由なく暮らせています」

2 / 5 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事