がんと向き合い生きていく

信頼のおけるかかりつけ医を見つけられれば患者は安心できる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 地域の急性期病院では、「長い外来待ち時間」「外来予約がかなり先になってしまう」といった問題が解消され、より専門的な医療が可能になると考えられますが、現実には大きな病院ほど外来患者であふれています。

 また、患者ごとに「かかりつけ医は○○クリニック」と決められているわけでもありません。普段、元気で過ごしている若い人は「かかりつけ医はいない」と答える方が多いと思います。日本における「かかりつけ医」というのは、とても曖昧なところがあるのです。イギリスでは、市民は診療所に登録して、診療所から病院に紹介されます。医療費は無料ですが、たとえば60歳以上は人工透析は行わないなど、受けられる医療にかなり縛りがあります。

 日本のがん医療においては、がん拠点病院を退院する時に「医療連携手帳」を作り、その後の検査や診療といった専門的な医療のスケジュールが示され、普段の持病も含めて総合的な診療を行う近所のかかりつけ医と情報を共有しての連携体制を整備することにしました。東京都では、5大がん(肺がん・胃がん・肝がん・大腸がん・乳がん)と前立腺がんの連携手帳と、前立腺がんが疑われ、精密検査の結果、がんなしと診断された人を対象としたPSA手帳があります。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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