がんと向き合い生きていく

がんで亡くなった旧友の病気を知っていたら役に立てただろうか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 M君は、いつもニコニコ笑顔で悩み顔を見せることはなく、美男子のスポーツマンでした。テニスが上手で、白の短パン姿がよく似合い、まぶしく見えました。私もテニスを始めてみたのですが、早々にやめてしまいました。部室でみんなが談笑して楽しんでいるのに、なかなか馴染めませんでした。もっとも、私がやめた理由はテニスが上達しなかったからだったと思います。

 M君はよく週刊誌「平凡パンチ」を買ってきました。彼はアイビースタイルを好んだのか、おしゃれでした。私は洋服にはまったく無頓着で、暇があれば日本文学、太宰治の「人間失格」や阿部次郎の「三太郎の日記」などを、好んで読んでいました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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