M君は、卒業後は大病院で腕を磨き、帰郷してからは地域医療に大変貢献されたのだと思います。私はまもなく上京して、それからはずっと東京暮らしだったので、以後はほとんど会えていませんでした。
私の中にいるM君は洋風で、奥さんからのハガキに印刷された寅さんのイメージとは違っていました。私は本当の彼を知らなかったのではないか……とも思いました。
私の友人2人に電話すると、M君が亡くなったことはすでに知っており、私はなんだか力が抜けたような気になりました。
彼が患った全身がんとは、未分化な胃がんか、あるいは多発性骨髄腫でもあったのか? まったく分かりません。がんを専門にしてきた私が、彼の病気を生きているうちに知ったら、何か役に立てたかどうか……そう思ってもどうにもなりません。
M君の上品さ、明るさ、テニスコートの白い短パン姿、そして「余裕のある心」。私にはそれらは永遠の憧れになってしまいました。
がんと向き合い生きていく