がんと向き合い生きていく

がんで亡くなった旧友の病気を知っていたら役に立てただろうか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 後にM君の奥さんになった方は、爽やかな長身の美女でした。2人がテニスコートで連れだって歩く姿は、友人みんなが羨む、似合いのカップルでした。

■本当の彼を知らなかったのではないか

 私が下宿先を転居してから、M君とは少し遠のきました。

 卒業が近くなって大学紛争の問題があり、学生の中でも意見が違って、それぞれグループがあったように記憶しています。しかし、M君も私もそれにはあまり関わらなかったと思います。

 私は「社会が良くなるためにはデモ行進に参加しなければならない」と考えながら、それでも「警察に捕まったらどうしよう……親はどう思うだろう」などと悩んだりしていました。弱虫で、それでいて悩む……自分でも困った性格だと思っていました。結局、M君とは大学紛争などのことで議論することはありませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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