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人工透析患者ががんになっても抗がん剤治療は不可能ではない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ここで申し上げたいのは、人工透析中の患者でも抗がん剤治療がまったく禁止、できないわけではないということです。投与方法や人工透析を受けるタイミングを計ることで、投与は可能になります。

■抗がん剤投与によって急性腎不全を起こす場合も

 ただ、抗がん剤の種類によっては難しい場合もあります。たとえば、胃がんや肺がんをはじめ多くのがんに使われている「シスプラチン」は、投与後に体内から薬物を除去する目的で人工透析を行っても、うまくいきません。シスプラチンが体内に残り、人工透析を受けるタイミングにかかわらず、血中濃度がリバウンドして再上昇することがあります。

 このような場合もあるのは確かです。とはいえ、人工透析中の患者ががんになったとき、抗がん剤の治療がすべて無理だということではありません。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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