ところがその後、アメリカの国立老化研究所から、ウィスコンシン大学と同様の研究の結果が出てきたのですが、こちらはカロリー制限による長寿効果は見られなかったと結論づけています。
両者の違いは、食事内容にありました。ウィスコンシン大学では、人工的に調節されたエサに、ビタミンやミネラルなどを足して与えており、国立老化研究所のほうは天然食材を食べさせていました。
つまり普通の食事をしている限り、腹七分目程度では、アンチエイジング効果は得られにくいことになります。人工的なバランス栄養食を少なく食べて、適切なサプリメントを取っていれば、老化を遅らせることができそうですが、それを毎日、数十年にわたって続けるのは、まず不可能です。
それ以前に、カロリーを3割減らせというのが、大半の人にとって無理な相談です。マウスやサルだって、おりに入れられて無理やりカロリー制限をさせられていたに過ぎないのです。
そこで、カロリーの総量規制が無理なら、成分調整でなんとかしようという発想の転換が生まれてきます。タンパク質、脂質、炭水化物を3大栄養素といいますが、その中のどれかを減らしてみたら、老化を防げるのではないか、という考えです。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。