たとえば、読者のみなさんが認知症のご家族と同居されていたとして、「(認知症の)おじいちゃん・おばあちゃんの寝つきが悪い」と医師に訴えたとします。一般的に、「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」と言われると、比較的容易に睡眠薬が処方されやすい。しかし、認知症に詳しい医師では、そうではないと思います。
前述の通り、概日リズム睡眠障害の一つ、不規則睡眠・覚醒リズム障害であって、24時間のトータルの睡眠時間は変わらない可能性があるからです。そのような場合に睡眠薬を使うと、一時的には夜の睡眠時間が確保されたように見えても、中長期的には不規則睡眠・覚醒リズム障害の増悪や、ADL(日常生活動作=自立生活の指標)やQOL(生活の質)の低下に陥る恐れがあります。
そもそも高齢者においては睡眠薬の処方は慎重であるべきです。呼吸抑制の誘発、転倒・骨折の危険増加などが考えられます。
第一人者が教える 認知症のすべて
年を取ると睡眠の質が低下…認知症ではより強く現れがちになる
何らかの睡眠問題を有する人の割合はアルツハイマー型で6割