第一人者が教える 認知症のすべて

年を取ると睡眠の質が低下…認知症ではより強く現れがちになる

太陽の光を浴びたり、日中の活動量を増やしたり…(C)日刊ゲンダイ
何らかの睡眠問題を有する人の割合はアルツハイマー型で6割

 たとえば、読者のみなさんが認知症のご家族と同居されていたとして、「(認知症の)おじいちゃん・おばあちゃんの寝つきが悪い」と医師に訴えたとします。一般的に、「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」と言われると、比較的容易に睡眠薬が処方されやすい。しかし、認知症に詳しい医師では、そうではないと思います。

 前述の通り、概日リズム睡眠障害の一つ、不規則睡眠・覚醒リズム障害であって、24時間のトータルの睡眠時間は変わらない可能性があるからです。そのような場合に睡眠薬を使うと、一時的には夜の睡眠時間が確保されたように見えても、中長期的には不規則睡眠・覚醒リズム障害の増悪や、ADL(日常生活動作=自立生活の指標)やQOL(生活の質)の低下に陥る恐れがあります。

 そもそも高齢者においては睡眠薬の処方は慎重であるべきです。呼吸抑制の誘発、転倒・骨折の危険増加などが考えられます。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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