第一人者が教える 認知症のすべて

軽度認知障害の時期に対策を講じれば、健康な状態に戻れる

せん妄の75%は無気力が特徴の低活動型ともいわれている(C)iStock
せん妄との鑑別に注意が必要。「急激な症状」かどうかがポイント

 アルツハイマー型認知症が疑われる場合、病院ではどのように診断していくのか? 一般的に、問診票への記入後、本人や家族に対しての医師の問診、診察(内科的診察、神経学的診察、認知機能検査)と共に、画像検査が行われます。

 認知症の診断で最初に注意が必要なのは、せん妄との鑑別です。高齢で入院すると、多くの場合にせん妄が生じます。興奮や多動などを伴う過活動型のせん妄であれば比較的鑑別しやすいのですが、せん妄の75%は無気力が特徴の低活動型ともいわれており、一見、認知症のようにも思えます。

 見極めのポイントとなるのは、「急激に発病」したかどうか。認知症であれば、「急激に」というのはありません。せん妄であれば、それを引き起こす因子(多くは薬や身体疾患)が取り除かれれば回復します。

 ほかに間違われやすい病気としては、まずうつ病をはじめとする精神疾患。老人性のうつ病を認知症と、また逆に認知症をうつ病と診断されるケースがあります。両方が一緒にある場合もあるので、診断が難しいのです。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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