正解のリハビリ、最善の介護

慢性期で本格的なリハビリ訓練を入所で行える施設はあるのか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 先ほども触れたように、慢性期の施設の利用対象は要介護の高齢者です。しかし、だからといって“人間力”の回復が望めない方ばかりではなく、「もっとよくなりたい」「がんばって自立したい」といった意思があり、特に脳卒中後遺症の方や廃用症候群の方で回復できるリハビリを希望している患者さんはたくさんいらっしゃいます。そういう高齢者にとっては、週1回で2単位(20分×2回)程度のリハビリ量では絶対的に足りません。

 回復のためのリハビリが必要な方の場合、1日6単位(計120分)が必要で、4単位(計80分)では機能や能力が落ちていくというデータがあります。仮に回復期病院で1日最大9単位(計3時間)のリハビリを毎日行っていた方が、週1回で2単位(計40分)に変更になれば、状態は確実に落ちていきます。1日2単位のリハビリに加え、自主訓練ができればなんとか落ちないように状態をキープできますが、自主訓練が難しい場合はやはり落ちていくのが“原則”といえるのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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