独白 愉快な“病人”たち

映画監督の河村光彦さん「脳梗塞」で救急搬送の一部始終を振り返る

河村光彦さん(C)日刊ゲンダイ

 それが一変したのは2020年2月でした。「胃がん」から「悪性リンパ腫」が発覚したのです。1カ月の入院と半年間の抗がん剤治療をして、今は経過観察中ですが、死ぬかもしれないと思ったときに夢を見たんです。黒沢監督が「河村君、あのビデオの価値を本当にわかっているのか?」と言うんですよ。それで一念発起して借金をして、ビデオをデジタル化して作ったのが「Life work of──」です。

 抗がん剤治療で免疫力が低下する中、コロナ感染の恐怖にさらされながら、字幕を付けるなど地道な編集作業を進め、40年の時を超えてやっと上映となったら、今度は脳梗塞。編集作業の中で毎日1つアンパンを食べていたのが悪かったのかな。劇場に作品を売り込むだけのために株式会社を立ち上げたり、いろいろなものを犠牲にした挙げ句、あれで私が死んでいたら、あの映像はお蔵入りだったでしょう。

5 / 6 ページ

関連記事