周辺のリンパ節に転移がある段階のステージⅢに関しては、①はⅢaとⅢbに分割した数字が公表されています。Ⅲaは転移が1~2カ所、Ⅲbはもっと多くの転移が見られる状態です。データをもとにステージⅢ全体の5年生存率を計算し直すと、72%となります。したがって①と②を比較すると、4・5ポイントの改善となります。術後補助化学療法が寄与したのかもしれません。
このように、ステージⅠ~Ⅲまでは5年生存率にそれなりの改善が見られますが、ステージⅣは厳しい数字になっています。数字上は0・5ポイント。統計上の誤差があるにしても、大きく変化なしと言ってもいいでしょう。
ただし、10年の時点では、ステージⅣの抗がん剤治療はまだ2段構えでしたし、使える薬の種類も、さほど増えていませんでした。
現在の5段構えの治療がどれだけ威力を発揮するか、分かるのは最短で5年後です。大きな改善を期待したいところです。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。