上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

脳梗塞を予防する「左心耳」への処置が保険適用になった

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■左心耳に対する症例は3600件超

 当初は、心臓手術を行う際に左心耳を糸で縫い縮め、血液の行き来を遮断する「左心耳縫縮術」を行っていました。抗凝固剤を服用するのと同程度以上に脳梗塞を予防することがわかっていて、2012年に上皇陛下(当時の天皇陛下)の冠動脈バイパス手術を執刀した際にも左心耳縫縮術を受けていただきました。

 近年は、さらに進化させて「左心耳切除術」を実施しています。左心耳を糸で縛るだけでは脳梗塞を完全に予防するには不十分なところがあったからです。もちろん、ほとんどの場合はそれで心原性脳梗塞を防げるのですが、ごくまれに心不全の症状が残ってしまうと防ぎきれないケースも出てきてしまうのです。そこで、左心耳は取り除いても大きな問題はないこと、血栓の移動を防ぐにはできるだけ左心耳を切除して縫った方が確実だとわかってきたことから、左心耳を切り取る方法にシフトしました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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