上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

脳梗塞を予防する「左心耳」への処置が保険適用になった

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 順天堂医院では、心臓手術に付随した左心耳に対する処置が3600例を超えていて、おそらく世界でいちばん症例数が多い施設です。これまで積み上げてきたデータと成果を海外の学会で発表するなど、ある程度のエビデンスも構築できたと自負しています。

 今年の4月から保険適用になった「左心耳閉鎖術」は、カテーテルを使って血管の中に器具を留置して左心耳を遮断する方法で、心房細動を治療中の患者さんで抗凝固剤の長期的な服用が難しい場合に限って認められました。あくまでも心臓手術に付随した処置で、脳梗塞を予防するためだけに実施することはできませんが、大きな一歩であるのは間違いありません。

 これまで、左心耳に対する処置はどの病院でも行える一般的な治療ではありませんでしたが、保険適用をきっかけに広まっていくでしょう。先行する施設の責任として、さらなる安全性と簡便性を見つけていく責任をヒシヒシと感じています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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