新型コロナ禍で何が起きているのか

「医療ひっ迫」と大騒ぎしながら国民医療費は4.0%減少

医療費の月ごとの変動(対前年比)

 宣言解除後の6月の医療費は、ほぼ前年度と同水準に戻っている。7月から8月にかけては第2波があった影響で少し下がった。しかし国民もだいぶ慣れてきたし、緊急事態宣言が出なかったこともあって、第1波ほどの下げは見られなかった。9月になると再び前年度の水準に戻し、10月には対前年比プラスに転じている。

 第3波は11月から今年2月まで。感染者が増え始めた11月の医療費は、受診控えが広がったためか、3・8%減った。ちょうど「インフルエンザとのダブルパンチ」が懸念されていただけに、高齢者を中心に警戒感が広がった時期である。しかし12月に入ると、感染者がさらに増え続けていたにも関わらず、昨年とほぼ同水準にまで回復している。結局、インフルエンザの流行が起こらなかったこともあって、国民の間に安心感が広がったためかもしれない。年が明けて1月8日に2回目の緊急事態宣言が発出されると、また医療費はやや減少した。だが1回目とは比べようもないほどインパクトは小さかった。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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