治療がうまくいけば患者と一緒に心安らぐのですが、有効な薬剤が少なく他の部位への転移が起こり、厳しい状態になっていく方もおられます。予想以上のがんの進行は、患者にも私にも大きなストレスでした。
当時、M病院長は、私が転居したことを知って、毛筆で「仁者は憂えず」と書いてくださいました。私はそれを額に入れ、リビングに飾りました。論語に「子曰く『知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼れず』」とあります。「仁者は憂えず」とは、「仁者は仁徳があり、あれやこれやと心配することはない」と解するようです。
ある人は「いい字だね。さすがM院長先生だ。あなたは幸せだね」と言ってくださいました。また、中国からの留学生を自宅に招待した時にはとてもほめてくれました。当時、その書をずっとリビングに飾ったままにしていました。字をほめる人、文をほめる人、いろいろです。
がんと向き合い生きていく