糖尿病治療を激変させた新たな薬「SGLT2阻害薬」の正体とは? 医師が解説

SGLT2阻害薬の効果は糖尿病だけにとどまらない

 SGLT2阻害薬は糖尿病の患者さんの予後を、トータルに改善する薬であることが確認されたのです。

■糖尿病だけではない

 しかし、この薬の有効性は実は糖尿病だけにとどまりません。

 まず注目されたのは心不全への有効性です。エンパグリフロジンの有効性が注目された論文を詳細に解析してみると、その有効性の大きな部分は、心不全の改善にあったことが分かったのです。

 そこで糖尿病のない心不全の患者さんに対しても、この薬を使用してみたところ、その予後を改善する効果が確認されたのです。そして今では、SGLT2阻害薬は心不全の治療薬として、日本でも広く使用されています。

 また、SGLT2阻害薬が痛風発作を予防するという報告や、慢性の呼吸器疾患を予防するという報告、ドライアイに効くという報告など、他の多くの病気を予防したり、改善したりする可能性があるのです。

 最近では更に慢性腎臓病に対する有効性が報告され、その応用が期待されています。さらに降圧剤ほどではないのですが、血圧降下作用もあるのです。

 どうでしょうか? まさに生活習慣病の万能薬と言っても、過言ではない効果ではないでしょうか?

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石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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