しかし確かにラクダ痘ウイルスは、うまく改良できればバイオテロにうってつけだろう。もともと天然痘ウイルスとよく似ているのだから、人への感染力を高め、毒性を上げるのは、さほど難しくないのではないか。
天然痘は感染力が強く、致死率が20~50%にも達する、人類史上最悪の感染症のひとつだった。幸いにして、世界中で種痘が実施された結果、1970年代までに根絶したが、そのため現在40代以下の人たちは種痘を受けていない。感染力と致死率を高めた改良型ラクダ痘ウイルスがまかれたら、世界が大混乱に陥ること必至である。
もちろん空想に過ぎない。ただ今回のサル痘騒動も、実は種痘が廃止されたことが影響しているらしい。アフリカ現地での研究によれば、サル痘の重症者の平均年齢は、1980年代には4~5歳だったのが、2000年代には10歳に上がり、10年以降は20歳に達しているという。つまり、種痘を受けていない世代の年齢が上がった結果、サル痘患者の平均年齢も上がってきているのである。日本も他人事ではない。いま46歳以下の人の大半は、種痘を受けていないから、サル痘への抵抗力を持っていない。うまく水際で防ぐことが肝要だろう。