太るタイプの2型糖尿病は薬で“治る”時代へ… 専門医に聞いた

過体重で2型糖尿病を発症している場合は治る可能性が(C)iStock
空腹感を弱め、満腹感を高める

 ──どのような仕組みでそのようなことが起きるのですか?

「食事を取るとインスリンの分泌を促すインクレチンと呼ばれるホルモンが小腸から出ます。その代表がGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)です。GLP-1は空腹時は働かず、食事をしたときにのみ、つまり血糖が高い場合にのみ、働きます。具体的には胃などで消化された食べ物が近づくとそれを察知して消化管の細胞表面から分泌されて膵臓のβ細胞の表面にある受容体と結合。膵臓からインスリン分泌を促し、血糖値を下げるのです。同時に膵臓のα細胞から、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制します。二重の意味で血糖値を下げるのです。しかもGLP-1受容体は体の至るところにあり、単に血糖を下げるだけでなく、膵β細胞の増殖、肝臓での糖新生の抑制、胃からの排泄抑制、中枢性食欲抑制などの働きを行うことがわかっています。GIPはそれを補完します。チルゼパチドは世界で初めてひとつの化合物でGLP-1、GIPという2つのホルモンの作用を発揮し、糖尿病の患者さんにより多くのメリットを提供する注射薬なのです」

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