「高齢者のがん治療」知っておきたい16のポイント 静岡がんセンター山口建総長が解説

■不利益の方が大きいと判断した場合は?

 治療効果が劣ってもより負担が少ない治療法、例えば放射線治療など、高齢者でも比較的安全に受けられる治療法がないかを探します。がん病巣への治療が困難な場合には、がんによって引き起こされる症状を和らげ、穏やかに暮らせる期間をできるだけ長くする緩和ケアを選択する場合もあります。

■危険を覚悟で手術を行うこともある?

 治療をせずに放置すれば短期間で死に至る場合、あるいはQOL(生活の質)が著しく阻害される場合で、患者さんへの負担が少ない治療法があれば、本人や家族の意向を聞いた上で実施します。

 一例を挙げると、進行大腸がんによる大腸閉塞で便の通過障害を起こしている場合です。このままいけば、激しい腹痛が避けられず、大腸が穿孔してお腹の中に大量に便が出てしまうかもしれない。

 腹膜炎を起こし、非常に致死率が高くなる。治癒は望めなくても、通過障害を避ける手術は負担が少ないので、手術に踏み切る医師は少なくないでしょう。

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山口建

山口建

慶応義塾大学医学部卒。国立がんセンター(現・国立がん研究センター)に勤務。内分泌部、細胞増殖因子研究部の部長などを歴任。1999年、同センター研究所の副所長、宮内庁の御用掛を兼務。静岡県立静岡がんセンターの設立に携わり、2002年、初代総長に就任し、現在に至る。著書に「親ががんになったら読む本」(主婦の友社)など。

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